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最高裁判所第一小法廷 昭和43年(あ)921号 決定 1968年11月14日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人前田修の上告趣意中判例違反をいう点は、判例の具体的な摘示がなく、その余の論旨は、単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない(刑訴法四〇二条のいわゆる不利益変更禁止の規定に違反するか否かは、第一審、二審において言い渡された主文の刑を、刑名等の形式のみによらず、具体的に全体として綜合的に観察し、第二審の判決の刑が第一審の判決の刑よりも実質上被告人に不利益であるか否かによつて判断すべきものであることは、すでに当裁判所の判例とするところである((昭和二五年(あ)第二五六七号同二六年八月一日大法廷判決刑集五巻九号一七一五頁、昭和三八年(あ)第一六五七号同三九年五月七日第一小法廷決定刑集一八巻四号一三六頁参照。))。本件において、被告人に対する自由拘束、法益剥奪は実質的にいずれが重いかを具体的綜合的に考察すれば、第一審判決が被告人に対し禁錮一〇月の刑を言い渡したのを原審が懲役八月の刑に変更したからといつて、原判決が第一審判決の言い渡した刑を被告人に不利益に変更したとはいえない。)。

よつて、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。(松田二郎 入江俊郎 長部謹吾 岩田誠 大隅健一郎)

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